蒲鉾は練るから練り物 |
車を停めたのは、出雲市大社町。そうです!あの出雲大社から直線距離で1キロ程の場所。
国道431号線沿い渡ればすぐ日本海という場所に佇む有限会社 別所蒲鉾店さんが1件目の研修先でした。
この日はべた凪、穏やかな日本海がコタン一行を迎えてくれました。とにかく静かでとても穏やか。港町のはずなのに、港町特有の荒々しさは全くない。空気?空間?までもゆったりとしてるように感じました。どこかガヤガヤとしていて当たりがきつい港町近くで育った私には、とても不思議な感覚でした。それは天気のせいばかりではなく、ただの田舎だけだからでもなく、きっと自然崇拝のトップ出雲大社をずっと祀り続けてきた地域の人々の生活スタイルがどこか影響しているんだろうなと思えました。
きちんと見学用の服・帽子を着用、手洗いをしっかりしてからいよいよ工場内へ。
中では丁度揚げものを作っているところでしたが、あれ?あの独特な油の匂いがほとんどしてこない。後で聞いてみて驚いたのが、揚げもの油はコタンでも取り扱いしている菜種油(生産履歴が確認できる遺伝子組換えではないオーストラリア産の菜種を圧搾した油。とにかく酸化しにくいのがこの油の特徴。一番搾り純正菜種サラダ油)を使用しているとのことでした。
丁寧に案内して下さったのは別所蒲鉾店の伊藤さん。商品の説明がどんどんと溢れだしてきました。
・かまぼこのつなぎとして、片栗粉も卵白も勿論添加物も使っていない。蒲鉾は練り物のはずなのに、流通する蒲鉾の大半は良く練られずにいろいろなつなぎを使い固められている。
・残念な事に国内で流通している95%の蒲鉾には、添加物が入っている。
・その添加物の中でも多く使われているのがリン酸塩という添加物。リン酸塩には骨を溶かして、カルシウムの吸収を妨害する性質を持つ。
・別所蒲鉾店で使われる魚は7割が地物の魚。出荷調整の為に捨てられてしまうような小魚に至るまで全部買い上げ、一匹一匹自社で捌くことによって、一次産業を守る役割を担い、美味しい蒲鉾をお届けできるようにしている。他の蒲鉾屋は地魚を使わない所が多い。安い遠くからくる冷凍のすり身を使うため、保水性や弾力性を保つ為の添加物が使われている。
・すり身の段階で品質が良くないものは、商品には使用しない。
・石臼でじっくりと魚を練ることにより、添加物もつなぎの卵白も使う必要がなくなり、ふんわりとした蒲鉾ができあがる。石臼は熱がこもりにくく、すり身自体の温度が上がりにくいので、魚の香りや風味が損なわれない。
・みりんをはじめ、使用している原材料はこだわりのものばかり、「安全なものを作るのに値段は関係ない」。
・放射能測定もゲルマニウム半導体検出器を使用し、検出限界値も意識して定期的に測定している。
・世の中に溢れている商品には、食品の保存やうまみを出すための添加物以外にも、製造工程において機械等をストレスなくスムーズに動かす為の潤滑油的な薬品まで食品に使われていることが理解できない。又、洗剤業界から締めだされた薬品が未だに食品には使われているのが許せない。
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などなどこだわりの商品だからこそできる、大変熱のこもった説明をしていただきました。
会社のモットーは「自分の子供にも安心して食べさせてやれるもの」
別所蒲鉾さんでは30年も前から添加物を使わない蒲鉾作りをしてきたそうです。材料にしても、その頃、発芽防止の為に放射線照射されていないじゃがいもを探すのに大変苦労されたとのお話もお聞きしました。魔法の調味料(工業製品?)添加物全盛のころから、食の安全を守る姿勢を崩さずにいること。また、商品にこだわりを持ち続けた上に、地域貢献・地域振興を大切にする会社方針に、メモをとりながら感動していました。
一般的に叫ばれている1次産業を守る動きは日本国中の課題でもあり、既に取り組みもされているのが見ることが出来るが、別所蒲鉾さん場合、地元漁師が獲った雑魚まで船ごと全て引き受ける徹底ぶり、(他者は地魚を使わない。保存料などの添加物使用せずに済むし、最高のトレーサビリティにも繋がる。)
地元の学校給食の蒲鉾は全て別所蒲鉾さんの商品・地元学生からアイデアを募集し商品化する事など、食の安全を頑なまでに守る別所蒲鉾さんの経営理念の上に、普及している事が大変羨ましくも思いました。
これから寒くなる季節。鍋物やおでんには、いろいろと熱い想いがこもった練り物はいかがですか?難しいことは抜きにしても、とにもかくにもうまいんです。
最後に問題:
うどんに入った蒲鉾は、どのタイミングで食べるのが正解でしょうか?
正解は:
最後に食べる。蒲鉾はお出汁がでるから。(※本当の蒲鉾だけですよ。)
料理に使われている食材の本来の意味まで、教えて頂いた別所蒲鉾さんでした。
ありがとうございました。
スタッフ 渡邊又弘
自然食コタン